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中高生の舌側矯正<裏側からの矯正>
舌側矯正を希望する患者さんが増えています
中高生の患者さんは、料金面や手軽さから表側の矯正をする方が多いですが、最近は裏側からの舌側矯正を希望する患者さんも増えてきました。
理由としては、以下のことが挙げられるかと思います。
- 写真を撮ること、SNSにアップすることが好き
⇒ 写真が最も多くなるこの時期を、矯正器具が目立つ姿で過ごしたくないから - 部活動が本格的で、真剣に取り組んでいる生徒さんが多い
⇒ 運動部の場合、転んだ時やぶつかった時に、表側より唇を傷つけにくいから
⇒ 吹奏楽部の場合、トランペットなどマウスピースを唇に押し付ける管楽器の演奏にも差し障りが出にくいから - 親御さんの矯正に関する理解が深い
⇒ 矯正治療を経験した親世代が増え、矯正器具のメリット・デメリットを体感しているから
舌側矯正に関する当院の考え
裏側からの舌側矯正は、表側の矯正と比較して技術的な難易度が高いため、治療の長期化をご心配される方もいらっしゃいますが、不正咬合のタイプによっては舌側矯正の方が有利な場合もあり、治療方法の長所と短所をよく考慮しながら、必要に応じて矯正用インプラントなどの工夫を加えることで、治療期間に概ね差がないと考えて良い状況になっています。
15歳の治療例
ここでは、現在治療を始めたばかりの15歳(中学3年生)の患者さんの治療をご紹介していきます。
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1.カウンセリング
患者さんは中学の吹奏楽部でトランペットを吹いています。高校でも吹奏楽を続けたいということで、金管楽器のマウスピースでの演奏に差し障りの少ない裏側からの舌側矯正を希望されていました。
また、中学の部活を引退してから高校に入学するまでの間に矯正器具に慣れたいというご希望があり、中学3年生の秋以降に矯正治療を開始することにしました。
未成年や学生の患者さまへのお願い
当院では未成年や大学生の患者さまの場合、初診相談や診断などでは必ず保護者さまの同席をお願いしています。
矯正治療は、期間や費用の問題をはじめ、矯正治療に伴い抜歯などを要する場合もあり、未成年者や、成人でも保護者さまの扶養下にある学生などの場合には、法的に契約能力が認められていないということも含め、保護者さまの同意がなければ矯正治療を開始できません。
初診相談では、矯正治療に関する方針、期間、矯正装置、費用などの概要のご説明をいたしますが、これらの概要にご理解をいただいてはじめて検査〜診断へと進めます。
また診断では、検査結果に基づいた具体的に矯正治療の計画のご説明をおこない、治療開始のための最終的な同意をいただく必要があるため、矯正治療上の要点となる段階では必ず、保護者さまの同席をお願いしています。 -
2.検査
検査時間は約1時間程度、セファログラム(横顔や正面のレントゲン写真)、顔写真、歯並びの写真の撮影や歯並び全体の「型」の採得(印象採得)を行いました。
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3.診断
コンピュータプレゼンテーションで、診断の結果をご説明いたします。こちらの患者さんの場合は、ご希望の舌側矯正が可能で、上顎2本と下顎1本の抜歯が必要と判断しました。
患者さんは高校入学までに装置の装着を完了し、その後は1か月に1度学校の帰りに通院をしたいとのことでしたので、できる限りご希望に沿った計画にて治療を始めていくことになりました。
診断時にも保護者の方の同席をお願いしていますが、診断にて確定した治療方針に同意をいただいた以降は、ご本人のみの通院で差し支えありません。
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4.リンガルブラケット(舌側)矯正装置【インコグニト】製作のための型取り
舌側矯正での治療が可能と診断できたので、次はインコグニト製作のための治療予測模型(セットアップ模型)の型取りです。
インコグニトは、ドイツのラボにて、まずは治療後の状態をシミュレーションした「セットアップ模型」を製作し、それに基づいてオーダーメイドの矯正装置が設計・製作されます。
まずは、当院にて精密な歯並びの型取りを行い、ドイツに送付しました。
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5.【インコグニト】の装着
検査から約1か月半で、ドイツから患者さんのカスタムメイドの舌側矯正装置インコグニトが届きました。
届いた時、患者さんは期末テスト前だったので、試験が終わってから装着することになりました。ブラケットを歯に装着します。ここではまずブラケットに慣れることから始めます。装着には1時間ほどかかりました。痛みなどは全く無かったようですが、口を開け続けることが少し疲れたと仰っていました。
下は、装着直後の患者さんです。
舌側矯正は、当初は舌の置く場所に違和感があることは事前に承知していて、その上で「すぐに慣れそうだ」と感想を言われました。装置が全く目立たないことに、笑顔で喜んでいました。
口を閉じると全く分かりません
口を開けると下の装置だけが見えますこちらの患者さんの場合、装置を付けてから2、3週間は喋り辛く滑舌が悪かったようですが、慣れてしまうと元通りに話せるようになったと仰っていました。
※装置に慣れるまでの期間は個人差があります。
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6.抜歯
表側の矯正治療で抜歯を要する場合は、先に歯を抜いた上で矯正装置を付けますが、舌側矯正の場合は、矯正装置を装着してから抜歯を行います。
こちらの患者さんは、2回に分けて抜歯を行いました。1回目は左上1本、2回目は右側の上下2本を抜きました。
抜歯1本の時間は、早い時は10分かからないくらいでしたが、抜きにくい歯の場合は30分以上かかりました。
抜歯の痛みについては、3本中2本は翌日には痛みは無かったとのことですが、抜きにくかった1本については2~3日の間1日1回痛み止めを服用したとのことです。抜歯が怖いという患者さんもいますが、こちらの患者さんは「口元を下げて横顔をきれいにしたい」という希望があり、治療に対して積極的で、抜歯も全く怖がらずにいました。
抜いた部分が目立つのではないかと心配されていましたが、真横からじっと見られない限りは、普通に話していても気づかれなかったそうです。
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7.ワイヤーの装着
装置に慣れ抜歯も済んだところで、いよいよ歯を動かすためのワイヤーの装着です。
上下合わせて1時間かからずに装着出来ました。※症状によって個人差があります
初めてワイヤーを装着した時は痛みを伴う患者さんも多く、こちらの患者さんの場合、装着した翌日から3日間位は疼くような痛みがあったそうです。痛み止めを服用すれば通常通りの生活は送れたそうですが、楽器の演奏は厳しかったようです。
「初めて装置を付けた日より違和感は無かったです」
「初めは食べ物がよく引っ掛かりました」 -
8.ワイヤーの調整
「早く歯が動いて欲しい」というご要望から「1か月後の診療日を楽しみにしていた」と来院されました。
よく歯を磨き、毎日口腔洗浄剤も使用されていたとのことで、口腔内は治療開始前よりきれいな状態でした。
楽器の演奏も再開されて、矯正治療開始前の生活に戻りつつあるそうです。当院では毎回、専用の機械によるクリーニング「PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)」を行ってから治療に入ります。
ワイヤーの調整は30~40分ほどで完了しました。※症状や処置の状況によって個人差があります。
ワイヤーを調整した翌日は少し痛みがあったようですが、初めてワイヤーを装着した時に比べると、小さな痛みだったようです。上の写真に比べると、たった1か月でかなり歯列が整っているのがわかると思います。
ご本人も治療の成果を感じて、「鏡を見るのが楽しくなった」と仰っていました。
1か月で歯のデコボコは随分整いました
「歯磨きが上手になりました!」患者さんの矯正治療は現在も続いています。毎月1回、学校の帰りにご来院いただいています。
主訴:出っ歯、口元の突出
診断名あるいは症状:上下額前突
年齢:15歳
治療に用いた主な装置:リンガルブラケット矯正装置(インコグニト)
抜歯部位:上顎左右第一小臼歯、下顎右第一小臼歯
治療期間:治療継続中
治療費概算(自費):約120~140万円(治療継続中) ※別途抜歯代
リスク副作用:
個人差はありますが、初めて装置を付けた時は疼痛や圧迫感などが生じます。
リテーナーを使用しないと後戻りがあります。
治療前後の比較で稀に歯根吸収が見られることがあります。
稀に歯が癒着していた場合、動かないことがあります。
不正咬合の状況により、歯肉退縮やブラックトライアングルが見られる場合があります。
カスタムメイド型リンガルブラケット矯正装置『インコグニト』について
- 米3M unitek社の製品の商標で、3Mジャパンから入手しています。
- 国内において薬機法未承認の矯正装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
- 材料については日本の薬事認証を得ております。
- 日本国内において承認された同様の医療機器があります。
- 米国では 医療機器として認可され、世界100か国以上の国で使用されており、深刻な副作用の報告はありません。
※平成29年医療法等の一部改正、平成25年薬機法公布(旧薬事法)に基づく日本矯正歯科学会の方針に従い、カスタムメイド矯正装置完成物、ならびに商品名の記載等について修正をおこなっています。日本矯正歯科学会の認定医ならびに専門医は、日本矯正歯科学会の倫理規定に準拠する義務を負っています。